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Re:
今井政幸 2009/08/12(Wed) 00:51 No.2
『1Q84』では、月が二つ出てくるのだった。
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「ねえ、英語のlunaticとinsaneはどう違うか知ってる?」と彼女が尋ねた。 「どちらも精神に異常をきたしているという形容詞だ。細かい違いまではわからない」 「insaneはたぶんうまれつき頭に問題のあること。専門的な治療を受けるのが望ましいと考えられる。それに対してlunaticというのは月によって、つまりlunaによって一時的に正気を奪われること。十九世紀のイギリスでは、lunaticであると認められた人は何か犯罪を犯しても、その罪は一等減じられたの。その人自身の責任というよりは、月の光に惑わされたためだという理由で。信じられないことだけど、そういう法律が現実に存在したのよ。つまり月が人の精神を狂わせるのは、法律の上からも認められていたわけ」 「どうしてそんなことを知っているの?」 「そんなにびっくりすることはないでしょう。私はあなたより十年ばかり長く生きてるのよ。だったら、あなたより多くのことを知っていてもおかしくない」 確かにそのとおりだと天吾は認めた。 「正確に言えば、日本女子大学の英文学の講義で教わったの。デイッケンズの講読。変わった先生で、小説の筋とは関係のない余談ばかりしていた。それで私が言いたかったのはね、今ある月ひとつだけでもじゅうぶん人を狂わせるんだから、月がふたつも空に浮かんでいれば、人の頭はますますおかしくなるんじゃないかということ。潮の満ち干だって変わるし、女の人の生理不順も増えるはずよ。まともじゃないないことが次々に出てくると思う」
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「今どんなことを考えている?」 「君が大学生で、日本女子大で英文学の講義を受けているところを」 「テキストは『マーティン・チャズルウッド』。私は十八歳で、フリルのついたかわいいワンピースを着て、髪はポニーテイル。すごく真面目な学生で、そのときは処女だった。なんだか前世の話をしているみたいだけど、とにかくlunaticとinsaneの違いが、大学に入って最初に身につけた知識だった。どう、想像して興奮する?」
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だそうな。
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